Plate tectonics and mantle convection
 
プレートテクトニクスとマントル対流
7. 沈み込むプレートのゆくえ
 ここでは,高速度域,すなわちプレートに関係する低温の場所に注目してみよう.マントル対流の中では,下降する流れである.日本の下にある青い領域に注目しよう.斜めの線状のものが日本列島の下に鮮明に見えている.これは,沈み込んだ太平洋プレートである.沈み込んだ後は,青い領域がマントル中に浮かんでいるように見える.浮かんでいるところは,深さ660 kmにある.つまり,上部マントルと下部マントルの境界である.このことから,沈み込んだプレートは,いったん深さ660 kmの境界のところに留まった後,下部マントルへ落下して行くように見える.この深さ660 kmの境界に留まる沈み込んだプレートは,滞留スラブ (スタグナントスラブ) と呼ばれる.滞留スラブは,多くの沈み込み帯で見られる.場所によっては,滞留スラブは大きな塊に見えることもあるので,メガリスと呼ばれることもある.巨岩という意味である.さらにマントルの最下部あたりには,大きな高速度域がある.これは,過去に沈み込んだプレートの行き着いた先と考えられる.
 では,どうしてスラブはそのまま下部マントルへ沈み込まず,いったん660 kmのところに溜まるのだろうか?そもそも,プレートが沈み込んでゆくのはプレートが低温のため,周囲のマントルよりも重くなるからである.とすると,660 kmのところでは,沈み込もうとする先,つまり下部マントルよりもスラブが軽くなってしまうからではないだろうか? つまり,密度の関係が,
 下部マントル > 上部マントルに沈み込むスラブ > 上部マントル
のようになっているということである.地球の層構造を説明したときに,深さ660 kmには地震波速度が不連続に増えるところがある,という話をした.ここでは,密度も8%くらい増加している.スラブは,温度が低いことで上部マントルより2から3%くらい密度が高くなっているので,スラブと周囲のマントルの関係は,ちょうど上の不等式のようになっているのである.ところで,これだとスラブは下部マントルへは沈んでいけないのではないだろうか?地震波トモグラフィーの画像では,下部マントルへ落ちていったように見えていたではないだろうか?もしも,密度差を生じる原因が,上部マントルと下部マントルが別々の物質で出来ていることにあるとすれば,この通りになる.図7のように,スラブが2つの層の境界の上に溜まるだけである.
 
 
図7: 沈み込むスラブが物質境界に衝突した際に起きる相互作用
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