スラブに働いている力のバランスが変わって,スラブはゆっくり後ずさりし始める (注38).このため,沈み込み帯のプレート境界,すなわち海溝が海側に動くことになる.海溝が後退すると,スラブ先端から相境界へ掛かる加重が減少する (注39).この作用によって,スラブは660 kmの相境界をすぐに通り抜けることができなくなる.沈み込んだプレートは滞留スラブを形づくる.地表では,海溝 (左側下向き矢印) が海側に移動すると,大陸プレートが引き延ばされて (図11(b),横向き矢印),大陸地殻 (赤塗りつぶし部分) の海溝に近い部分が大陸本体から離れてゆく.引き延ばされたところには,中央海嶺と同じように新しい海底ができる (図11(c),右側下向き矢印).このようにしてできたのが,現在の日本海や日本列島であると考えられる.図11(d) で,大陸側のプレートが引き延ばされて,薄くなっているところが,新しくできた海洋プレートである(横向き矢印部分).日本のように沈み込み帯にある島々を島弧,島弧の後ろ側,つまり大陸プレート側を背弧と呼ぶ.また,背弧にある海洋のことを縁海と呼び,その海底のことを背弧海盆と言う.