(注9) 熱の正体が原子や分子の乱雑な振動であることを思い出そう.
(注10) 熱伝導率は物体1 mあたり1°Cの温度差があるときに1 m2の面を通して1秒間に運ばれる熱量で表される.マントルを構成する岩石の熱伝導率は磁器やガラスと同じくらいである.これらの物質は,木材と比べると10倍以上の熱伝導率を持っている.また,核の主成分である鉄と比較すると1/10,熱伝導性の良い金や銅と比較すると1/100程度である.
(注11) 地球のプレート運動の速さは,1年間あたり1-10 cmである.ゆっくりすぎて想像しづらいが,だいたい爪が伸びる速さくらいである.
(注12) リソスフェアを岩石圏と訳すことがあるが,地質学会ではそのままカタカナ書きで使用することを推奨している.リソスフェアの下にある高温で岩石としては流れやすいマントルはアセノスフェアと呼ばれる.図4.1.2において,プレートとアセノスフェアの境界は,はっきりと書いてあるが,温度が徐々に変わる境界であり,(少なくとも温度のみで考える場合) 明瞭なものではない.最近の地震学的研究や地球電磁気学的研究からは,海洋プレートの下では地震波速度や電気伝導度が明瞭に異なることを示すデータもある. そのため,リソスフェアとアセノスフェアの境界を作る原因は部分融解あるいは水であるとする考えもある.
(注14) プレートの厚さは,熱伝導率の大きさと冷やされる時間 (プレートの年代) で決まっている.厚さはプレートの年代の平方根に比例して増加し,1億年の年代を持つプレートで厚さはだいたい100 kmである.プレートは,厚くなると重くなるので,ちょうど積み荷が増えて喫水 (きっすい) の下がる船のように沈下する.プレート全体でアイソスタシーが成り立っているのである.そのため,プレート年代の古い場所ほど大きな水深を持つ.
(注15) 主に玄武岩でできている.
(注16) 主に花崗岩からなる.
(注17) 海嶺や沈み込み帯と独立した点状の火山のある熱い場所をホットスポットと呼ぶ.
(注18) 大陸移動説の原動力として,最初にマントル対流を提唱したのはA. ホームズである.1928年グラスゴーで開かれた地質学会で発表されたが,プレートテクトニクスが認められるようになるまでほとんど顧みられることはなかった.ホームズは放射性元素を地質年代測定に応用出来ることを発見した研究者の一人であり、地球の年齢を推定したことでも知られている.