プレートテクトニクスとマントル対流
注2
日本列島が載っているプレートは,本によって違うプレートの名前が書いてあることがある.このようなことがあるのは,なぜだろうか.プレートテクトニクスでは,地球の表面が十数枚の板=プレートにからなると考える.1枚1枚のプレートは全く変形しない物体,つまり剛体であると仮定する.当然その境界は1本の線で表されることになる.その上で、プレートの運動を境界の断層運動や大陸移動のデータを最も合うように決定する.つまり、プレートテクトニクスとは,なるべく多くの観測事実を説明するための簡単化(=剛体を仮定)されたモデルなのである(モデルという考え方については
9節
を参照のこと).ところが実際には,プレートを構成する岩石は変形することができ,プレートは完全な剛体ではない(完全に剛体だときっちりはまったパズルのように動く余地がなくなってしまう).つまり,プレートには変形している場所がある.プレート間の運動の差が小さい場合やプレートが変形しやすい場合,プレート境界があるはずの場所に海嶺や海溝,あるいはトランスフォーム断層がなく,ゆっくりと伸び縮みしたり歪んだりするだけの場合もある.つまりその場所では,プレート境界を線で表すことができないのである。北米プレートとユーラシアプレートの境界は,ロシア東部から北海道にかけて存在すると考えられていた(図1のプレート分布はこのような考え方に基づいたプレートのモデルである)が,その場所は正確には分かっていなかった。ところで,日本海東部には線状に地震が集中している地域があるのが分かっていた.その中で起きた大地震が1983年の日本海中部地震である.この地震によってその断層運動が詳しく分かると,日本海東部から糸魚川・静岡構造線にかけての地震集中帯が北米プレートとユーラシアプレートの境界であると考えられるようになった.また、従来1つのプレートと考えられていた場合にも,内部に変形の大きい場所が存在することがある.このような場合には,変形の大きい場所を境に2つのプレートと考えた方が観測をより良く説明できることがある.このような場合,分けられたプレートの1つがとても小さいことがあり,その小さなプレートはマイクロプレートと呼ばれる.実は,日本列島は東日本がオホーツク(マイクロ)プレート,西日本がアムール(マイクロ)プレートに載っているとすると,日本周辺の地震や運動のデータにより良く合わせることができることが分かった.十数枚の大きなプレートだけで日本列島周辺のプレート運動を表す場合には,オホーツク(マイクロ)プレートは北米プレートに,アムール(マイクロ)プレートはユーラシアプレートに含めると観測をより良く説明できる.このような考え方で、東日本は北米プレートの上にあり,西日本はユーラシアプレートの上にあると言われるのである.
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