Plate tectonics and mantle convection
 
プレートテクトニクスとマントル対流
3. 地球内部の熱
 地球内部が高い温度を持つことは,火山が溶けた岩石を噴き出すことから想像が出来るであろう (注6).では,地球内部に高温をもたらす熱は,どこから来ているのだろうか.1つは,地球が最初に出来たとき高温であったことによるなごりである.これは,たくさんの小さな天体が地球に向かって落下することによって,地球が出来たからである.落下してくる天体の運動エネルギーが熱に変わったのである.もう1つは,岩石中に含まれる放射性元素が崩壊する時に出す熱である.その放射性元素は,具体的に言うと,ウラントリウムカリウムの放射性同位体である.岩石1 kgあたりの放射性元素はとても少ないが,地球の大きさを考えれば,大量の熱となる.地球は長い時間でみた時,過去熱かった余熱を持ち,徐々に冷却している.一方で、放射性元素が発する熱は地球が冷却する速さを遅くしている (注7).その結果,地球が生成されてから約46億年経た今でも地球内部は高温であり,我々は活動的な地球を目の当たりにすることができるのである (注8).では,固体であるマントルがこれらの熱を地球の外にどのように運び出しているのであろうか.
 
(注6) ただし,地球の中がすべて溶岩なのではなく,溶けている場所が部分的に存在する.溶けている部分も,岩石が100%溶けているのではなく,岩石を構成している鉱物の一部が溶けているに過ぎない.地震波のS波 (横波)が通ることから,地殻やマントルは固体なのである.
(注7) マントの岩石1 kg中にある放射性元素が出している熱は10-12 Wのオーダーである.地殻熱流量の観測から,地球が出している熱は全体で42 TW (テラワット=1012 W) であると見積もられている.図はDavies (2013)によるグリッド平均データ (文献A2) を可視化したものである.ただし,データには観測困難な場所に対して理論的外挿により求めた値が含まれている.観測困難な場所とは,熱水循環のある中央海嶺付近の若い海底である.
(注8) 地球の全熱放出のうち,放射性元素が出している熱の割合をユーレイ比と呼ぶ.ユーレイ比は, まだ議論の対象となっているが,ユーレイ比は0.5程度,つまり放射性元素が出している熱は半分程度ではないかと考えられている.残りは地球が冷却による熱放出である.ユーレイ比が0.5程度のとき,マントルの平均温度は10億年で100°C程度低下する,なお,放射性元素が出している熱の20 TWという値は,人類が石油燃焼などにより消費しているエネルギー13 TW (一人当たり約2300 W) と比較すると,驚くべきことに同じくらいの大きさにしか過ぎない.