図:大陸リソスフェアとマントル対流の相互作用
大陸リソスフェアは厚いので,その下からの熱を逃がしにくい.このため、大陸リソスフェアの下は広域にわたって高温となり,長波長の温度異常が出来る.この結果,大陸下から外側に向かって流れ出す大規模な対流を、マントル深部では逆に大陸下へ集まる流れを生ずる.その結果,大陸下には大規模な上昇流,すなわちプルームが発生す.これは超大陸を分裂させる原因になるかも知れない.図は2次元モデルによる計算で、モデルの半分を大陸リソスフェアで覆っている.5つは温度の時間変化を表し、上から下に時間が経過する.大陸リソスフェアは上の2つの時間では左半分にあり、下の3つでは右半分にある.大陸リソスフェアを動かしてからしばらくプルームは左にあるが,しばらくすると右側にもプルームが出来る.最終的には右に移動して,大陸のある右側のみにプルームが存在する状態となる。実際の地球でも長時間動いていない大陸でるアフリカ大陸の地下に高温と見られる地震波低速度異常が見つかっている.しかし,大きな海洋である太平洋の地下にも大規模な低速度異常が見つかっている.このことはプルームの分布にプレートの沈み込みによるマントルの下降流も強く影響しているということを意味しているのかも知れない.
関連論文
T. Nakakuki, D.A. Yuen and S. Honda (1997) The interaction of plumes with the transition zone under continents and oceans, Earth and Planetary Science Letters, 146, 379-391.
本多 了・中久喜伴益・岩瀬康行 (1997) マントルプルームとは何か−数値シミュレーションの立場から,科学,67, 513-518.
中久喜伴益 (1999) マントル対流システムにおける大陸の役割,月刊地球号外,no. 23, 49-55.
本多 了・吉田晶樹・岩瀬康行・中久喜伴益 (2001) 大陸の熱遮蔽効果によるプルーム発生,月刊地球,23, 507-510.