下部マントルへ沈み込むリソスフェアの変形とプレート運動
上:プレート・マントル対流結合モデルの温度 (断熱温度からの変位)
下:(a)(b)沈み込み帯周辺の粘性率, (c) スラブ先端とプレート運動速度
 
ホットスポットはプレート運動速度よりゆっくり運動していることから、プレート絶対運動の基準とすることができる。 沈み込みを持つプレートの運動は5〜10cm/年程度であるのに対して、 地震波トモグラフィーから1000km以深において、沈み込んだプレートの落下速度は1〜2cm/年であると考えられている。これは、ホットスポットの運動と整合的だが、沈み込むリソスフェアの運動は先端と地球表面で速度が異なることを示す。本研究では、このような運動の食い違いを生じる原因について考察するため、粘性率の層構造、プレートの強度、熱膨張率の深さ依存性がリソスフェアの変形および運動に与える影響について調べた。その結果、次のようなことが分かった。(1) 660kmでの粘性ジャンプは大きくなく10倍以下が望ましい。(2) スラブの強度は少なくとも下部マントル最上部において200MPaよりも小さい。(3) 熱膨張率の圧力依存性はスラブの折れ曲りの原因となりうる。下部マントル最上部でのスラブの強度低下は、ジオイドスタグナントスラブの下部マントルへの落下,および1000km付近における滞留と調和的である。また,スラブの折れ曲がりによる大規模な低温異常域 (図の下部にある青いかたまり。赤は高温異常) はトモグラフィーが示す大規模なマントル最深部の地震波高速度構造を説明可能である。
 
関連論文
 
T. Kaneko, T. Nakakuki and H. Iwamori (2019), Mechanical coupling of the motion of the surface plate and the lower mantle slab: Effects of viscosity hill, yield strength, and depth-dependent thermal expansivity, Physics of Earth and Planetary Interiors, 294, 106274, 2019, doi:10.1016/j.pepi.2019.106274.